【読書】研究者とは、どんな生き物なのか?
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感想
主人公の橋場は大学4年の研究室配属で研究者の喜嶋先生に出会う。喜嶋先生を通して見る研究者の世界、あるいは、研究の世界を描いた小説である。
将来、自分も研究室に配属されることになるので、その参考にということで読んだ。小説だが、著者の森博嗣氏は、名古屋大学で約20年間研究に従事していたことから内容に説得力を感じた。*1小説というよりむしろ自伝かなと思った。
私にはなりたい職業の一つとして研究者がある。研究者の仕事内容、特に大学に勤める研究者のそれについては、春・秋学期に大学生相手に講義をして、残った時間はのんびり好きな研究をするというイメージだった。正直最高の職業(の一つ)だなと思っていた。どうやら研究についても、研究者の仕事についても考えが甘かったようだw
氏の本を読んで、研究について改めて考えてみるととても恐ろしく感じた。研究とは、人類史上初の発見あるいは開発のことだ。従って、何が既知で何が未知なのかわかるために、ある分野の膨大な知識体系を身につける必要がある。つまり、勉強だ。これはまだ良い方かもしれない。やればやるほど成長する。しかし、研究は違う。やれば達成できる確証はどこにもない。何年も研究して結局なにもわからなかった場合もあるだろうし、それさえも明らかにならない場合もあるだろう。「この仮説であっているのか?」、「この研究手法は正しいのか」、常に疑念や不安が付きまとう。さらには、ライバルの研究者に先を越される恐怖もあるだろう。出口が開いてるのかさえわからない真っ暗なトンネルをひたすら走り続けなければならない。(まるで、ハンター試験だなww)
仕事に関しても、実は研究だけでなく様々な業務をこなしているようだ。入試問題の作成、営業、講演など。そして、会議、会議、会議の連続。(Twwiter上でも研究者の人たちがつぶやいてる)これらの雑務で、研究する時間がますます圧迫されるのだろう。さらにその上、任期内に成果をあげなければいけないとしら...
話は暗くなってしまったが、この本は本当におもしろいし、ためになったし、改めて研究者ってすごいなと思わせてくれた。最後に、いくつか文章を引用する。
「どうして、僕が思わなくちゃいけないの?」
いい経験になった、という言葉で、人はなんでも肯定してしまうけれど、人間って、経験するために生きているのだろうか。
学問には王道しかない。
*1:参考資料浮遊工作室(about森)